
最初は白い幕を使用してその後黒い幕を使用している文化が流入し、双方の影響を受けてオリジナルの物を製作したのが鯨幕の始まりです。
特に武将による戦があった時期には白い布が多く使われる傾向が強く、素材準備のしやすさの観点からではという諸説が存在します。よって黒色が伝わった時期にも墨の塗料で染めやすい事が原因で簡単にオリジナル文化の製作が行われたとの考え方もあります。
一方で地域オリジナル文化として旧暦で数える祭事に現在も使われている事が多く、使用用途が非常に多い幕として認知度が高く推移しています。名称も鯨幕で定着している傾向がありますが、一部地域では蘇幕の名称で浸透しているので、総合的な文化に対して格式の高い演出をする物という考え方が定着した経緯があります。
各用途から屋内で使用する事例も多い為、綿や麻といった天然素材で高級感の演出も簡単になります。ただし屋外設置には遮光素材や葛城等の化学素材が必要になるので、製作依頼先は専門業者の利用を検討しましょう。この場合は素材代金の他に製作費用も掛かるので、頻繁に利用しないご家庭ではレンタルする人も多く存在します。
鯨幕の歴史
お葬式で鯨幕が使用されるようになったのは、歴史上では明治時代に入ってからです。この時期では海外から文化が大漁に日本に入ってきた事もあり、特に西洋文化の流入は命の終わりと黒色の連想を確固たる物にした意味があります。
さらに歴史は進み大正時代になると凶事全般に白と黒の色が使われるようになり、ここから縁起の悪い事にも鯨幕を使用するようになります。そのため専門業者への製作依頼も飛躍的に伸びたので、弔事や凶事を利用したビジネスを誕生させた意味もあります。
尚且つお葬式の関連器具として使い始めたのも専門業者なので、文化の中では歴史の深さと意味にそれ程深い意図が存在しない物に分類されています。この原因になっているのは黒の塗料自体が当時高価だったためで、一般家庭のお葬式で使用されるようになったのは昭和に入ってからです。ここから鯨幕の名前が付いたのは捕鯨が世間的に認知された後なので、名称の歴史もそれ程深くはありません。
鯨幕の意味と使われる場面
日本国内で黒を使用する意味は格式の高さを現す用途で使用され、伝統的な祭事や神事ではこの格式を元に会場の飾り付けが行われています。これらの行事は慶事と弔事等内容の正と負に関わらず、格式のみの視点で行われているので、日本の皇室で行われている多くの祭事は鯨幕が使用されます
ですが歴史が浅い影響もあって複数種類の幕を同時に使用して、会場の領域毎に聖域等を指定する用途が普及しています。特に親族の家でお葬式を行う場合は、生活空間などを見せたくない事情もあるため、それを覆い隠す用途で使用される事例もあります。
しかし近年では格式の意味が薄れている傾向も強く、宗派や葬式内容によっては使用を見合わせる事もあるので状況による使い分けが必要です。中でも結婚式で使用する事例は、地域間で浸透度の違いもあるため文化圏によって多少用途が違ってくる側面もあります。
こういった違いから伝承過程も鯨の脂肪と皮の部分から付いた名前や、俳諧と洒落本の影響から付いた名前等複数の由来が伝わっています。