
飲食店の店頭に飾られているのぼり旗は、歩いたり車を運転している時でも
よく目につくものです。
そこに記載されたおいしいそうな食べ物は、とても食欲をそそりますし
一目でその店の看板メニューがわかりますから、とても便利です。
のぼり旗のデザインにひかれて、ついその店に入ってしまう、という人も
少なくないことでしょう。
特に、秋冬の寒い時期には、のぼり旗に描かれたあたたかい食べ物が
冷えた身も心も芯から温めてくれるように見えるものです。
湯気の立ったご飯や飲み物は、見るだけでも心が和みますし
なぜかあたたかい気持ちになるものです。
寒い外気にさらされていると、早く家に帰ってあたたかい食べ物を
食べたいと思うものですが、途中で飲食店ののぼり旗を目にすると、
家に帰りつくまで我慢ができなくなってしまいます。
家に帰っても、料理をつくるまでには時間がかかりますし、
その間寒い台所に立つのも辛いものです。
それなら、お店ですぐに食事を済ませた方が手軽ですし、
すぐ身体もあたたまります。
江戸時代から愛される「鍋料理」その始まりと発展
1つの鍋で調理から食事までを済ます「鍋料理」が一般的な料理として浸透したのは、江戸時代になってからです。江戸時代後期になると、鍋料理の代表格でもある、すき焼きやちり鍋やおでんなどが、庶民に広く親しまれるようになりました。
それまで日本の料理といえば、おかず一品ずつが独立してお皿に盛り付けられた形が一般的でした。その当時、鍋は神聖なものと考えられ、食事の道具として使うことはあり得ないことでした。
しかし、1643年に出版された江戸の料理本「料理物語」では、「なべすき」という鍋のまま食卓へ出す料理が掲載されています。できたてで熱いまま料理を味わえるという、これまではなかった鍋料理ならではの特長が、多くの人々に衝撃を与え、その美味しさから制度や習慣をも超えて大人気となりました。
江戸時代は、それまでには難しかった庶民が食事を楽しむことができるようになり、たくさんの料理が生まれた時代でもあります。鍋料理が多くの人に受け入れられ人気が出たことから、その後はおでんの元となる田楽を出すお店や湯豆腐のお店、あんこう鍋のお店など、多くの鍋物屋ができていきました。
鍋料理が庶民の間でこれほど普及した背景には、その美味しさはもちろんですが、みんなで1つの料理を一緒に食べるという楽しさもあったのではないでしょうか。